プラネタリウム
第120回 私たちは宇宙をどこまで理解したのか?~葛飾から宇宙の果てまで
人と天文学の関わりや、私たちがプラネタリウムで体感できる宇宙についてお話をいただきました。
(講師からのメッセージ)
私たちが見上げる星空の向こうには、いったいどのような世界が広がっているのでしょうか。地球から宇宙の果てまで、現代天文学が明らかにした宇宙の姿を、宇宙シュミレータを用いてご紹介したいと思います。
概要
日時
令和6年9月28日(土曜日)午後7時~午後8時30分
講師
高梨 直紘(たかなし・なおひろ)氏
東京大学特任准教授、天文学普及プロジェクト「天プラ」代表
講演プログラム(当日配布したレジュメより)
- 太陽系
- 星々の世界
- 銀河系
- 銀河宇宙
- 宇宙の果て
質疑応答
聴講者からの質問と講師回答
- 東京がある地球はどれくらいではめつしてしまうんですか?(Tさん、10歳・子ども)
太陽はその一生の最後で巨大化するので、その時には確実に地球は生命の存在できない惑星になると思います。が、50億年くらい先の話です。でも、私たちがいまのままであれば、人間にとって住みやすい環境がなくなってしまうのはもしかすると数百年程度の話かも知れません。私たちの智慧が試されていると思います。
- マケマケという名の由来は?他にはどんな惑星がみつかっていますか?(Mさん、50代・地球人)
マケマケはモアイで有名なイースター島の創造神から名前をいただいたそうです。世界のさまざまな神話から名前をいただいている天体や地形の名称がありますので、興味があれば調べてみてはいかがでしょうか。マケマケと同じ冥王星型天体としては、ハウメアとエリスがありますが、いずれの名前も神様にちなんでいます。
- アンドロメダ銀河とぶつかる時、星の自転や周期がくるったりしないのでしょ うか?ぶつからなくても、重力の影響は受ける気がしてしまいます。(Mさん、30代・女性)
アンドロメダ銀河との衝突に際して恒星の自転や惑星の公転周期が変化する可能性はゼロではありませんが、そのような影響が現れるほど他の恒星が近くにやってくる可能性は低いと思いますので、元々天体が集中している球状星団や銀河中心のような特殊な場所でない限り、その可能性は極めて低いのではないかと思います。
- もし星が地球にぶつかったら、自転公転軸は変わってしまうのでしょうか?(Iさん、30歳・大人・男性)
ぶつかり方や、ぶつかるもののサイズにもよりますが、変わってしまう可能性はありますね。
- 星の明るさ、重さは、どこできまるのでしょうか?星雲の頃?星団の頃?(Iさん、30歳・大人・男性)
星雲か、散開星団か、とうことであれば星雲の頃です。星雲の中でどのようにガスが集まり、最終的な質量が決定するのかについては、さまざまな理論的な研究があり盛んに研究されていますが、まだ明解な答えがあるわけではない、と門外漢としては認識しています。
- 138億光年先の銀河の星は、どんな姿をしているのでしょうか?(Iさん、30歳・大人・男性)
138億光年先、宇宙マイクロ波背景放射が見えているところには、そもそも星はありません。星の材料となる水素は存在していますが、恒星のようなまとまった状態ではなく、薄く広がっているだけだと考えられます。一方、135億光年先には天体が存在していることが分かっていますが、その詳細はまだよく分かっていません。
- 宇宙は膨張していますが、銀河同士の間は広がらないのですか?(Dさん、63歳・男性)
銀河同士の距離は、宇宙膨張の効果によって基本的に広がっています。ただし、比較的近距離(数百万光年以内)の銀河同士は、宇宙空間が拡大する力よりもお互いに引き合う力の方が強く、例えばアンドロメダ銀河は銀河系に近づいてきています。
- 138億年の中心点はどこですか?ビッグバンの中心?また、中心は観測点と同じですか?(Tさん、40代・大人)
もし宇宙を「外」から見た場合、特別な中心はありません。Mitakaや宇宙図ではなんだか地球が宇宙の中心のように見えますが、これは、観測者たる私たちがいる場所から宇宙を描いたらどうなるか、というだけの話で、宇宙の中心が地球であるというわけではありません。
(注)
Mitaka…国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクトが開発し、無料公開されている、宇宙の階層構造を可視化するソフトウェア。本講演でも講師が使用し解説が行われた。
(参考)4次元デジタル宇宙ビューワー"Mitaka"
https://4d2u.nao.ac.jp/mitaka/宇宙図…文部科学省の科学技術週間(毎年4月18日を含む1週間(月~土曜日))におけるポスター型の学習資料「一家に1枚」シリーズのひとつ。講演の最後に「一家に1枚宇宙図2024(第4版)」の紹介があった。
(参考)文部科学省「一家に1枚宇宙図2024(第4版)」について
https://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/week/1413572_00005.htm
(参考)文部科学省 科学技術週間における学習資料「一家に1枚」シリーズ
https://www.mext.go.jp/stw/series.html
- 138億光年より遠い天体を発見できる可能性はありますか?(Tさん、69歳・男性)
現時点では、原理的に「ない」です。100億年後なら、238億光年先まで見えるようになります(が、変わらずそこに見えているのは宇宙マイクロ波背景放射)。
- 宇宙のはては丸ですか?形を知りたいです。(Sさん、11歳・子ども・学生・地球人)
宇宙は、宇宙の「外」から見ることができません。そのようなものは、全体の「形」というものが考えられません。ふしぎな気もしますが、宇宙とはそういうものです。
- 宇宙の色は、むらさきや黒、青が良くありますが、本当は何色ですか?(Sさん、11歳・子ども・学生・地球人)
宇宙全体の色は、あえて言えば「ベージュ色」だと以前発表した研究者がいました。もっとも、それもぴったしの表現ではないそうで、あくまでも近い色は…ということだそうです。ちなみに、人間の眼に見えるようなはっきりした色ではなく人間の眼ではさっぱり認識できないような、かすかな色のようです。
- ビッグバーンの音は、わかりますか?(Sさん 11歳・子ども・学生・地球人)
分かります。宇宙マイクロ波背景放射の中に音波の痕跡が残されています。これを「バリオン音響振動」といいます。残念ながら今となっては人間の耳にはまったく聞き取れない超低音ですが、でも、音波として存在していたのは間違いありません。
- びっぐばんがどうやってでた?(Sさん、6歳・子ども)
まだよく分からないのですが、インフレーションと呼ばれる宇宙の急拡大の結果、ビッグバン宇宙が誕生したとする説が有力だと考えられています。
- うちゅうのはてがわかった(Yさん、6歳・小学生・男性)
良かった!
- ダークマター、ダークエネルギーって何ですか?気になってねむれません。(Aさん、63歳・男性)
ダークマター、ダークエネルギーともに正体不明ですが、ダークマターは質量があることは間違いなく、素粒子の一種ではないかと予想されています。ダークエネルギーについては、空間において斥力として働くことは分かっていますが、その他のことはさっぱり分かっていません。当面眠れないままで恐縮です。
- 宇宙に関する数字がたくさんでてきましたが、覚え方などはありますか?(Gさん、10代)
ないです。でも、そんないっぱい数字があるわけじゃないから、きっとすぐ覚えられます。
- 先生は、宇宙人(知的生命体)がいるとしたら、どのような姿をしていると思われますか?(Rさん、50代・大人・女性)
人間型!と言いたいところですが、どうでしょうね。きっと機能的に美しいデザインになっているか、あるいは、完全に機械化されていてもおかしくないかな、と思ってます。